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CoverStory
リバイバルザナドゥのものなのですが、とても気に入ったので引用
流石に丸コピーは手抜き過ぎるので稚拙ながら今流行りのAI生成画像を付けてみた

Xa
それは、はるかなる昔、すべての生ける者と死する者が同じ世界をわかち、互いにその領分を犯すことなく、自らの世界の中で、満足していた頃のことである。
 この地は、あたり一面に花が咲き乱れ、人々が幸福の中に一年中飽くことを知らず、美しく平和に満ちた土地。この美しく平和な世界を、人は「XANADU=桃源郷(歓楽宮)」と読んでいた・・
あの恐ろしい出来事は、人々のそうした心のスキをついたものだったのかもしれない・・。

Xa
 未来を見る眼を持たぬものにも、それは異様なことに思われた。月が朱に染まり、天空の星々がその位置に乱れを生じ始めたのだ。
「魔王がくるぞ!」
「我らのXANADUが消滅する!」
「我らには死の世界が待っている!」
 予言者たちの、災いの到来を叫ぶ声が通りに響きわたったとき、それを嘲ることのできた者はごく僅かだった。そして、彼らもまた自分の言葉をすぐに取り消すことになる。
数日もせぬうちに、温暖であったXANADUの気候が崩れ出したのだ。豊かな稔りをもたらし続けた太陽は分厚い雲の向こうに隠れ、再び現れることはなかった。
季節外れの北風が大地に吹き付け、肥沃な土とともに実をつけはじめた作物を巻き上げた。海は荒れ、森は枯れ、草原には雪すらも舞い降りた。
 初めての、そして深刻な凶作がXANADUを覆い尽くした。それまでの幸せな生活が一変した人々の耳には、予言者たちの言葉は強く響いた。
魔王の来襲、XANADUの消滅・・不吉な言葉に人々は怯え、心を乱した。XANADUを統治する王ジュリデンは、人心を乱す輩として予言者たちを地下深く投獄し、民衆から不安を除こうとした。
だが、次々と襲いかかる事実の前には、それも虚しい試みだった。
「・・天の神様のお怒りに触れて、このXANADUが地中深く埋まってしまう時が近づいたに違いない」
「・・いや、魔物たちが押しよせて来て、我々を一人残らず喰い殺すのだ」
 誰からともなく立ち上る噂の数々すらも、異変におびえる人々の心を動揺させずにはいなかった。やがて、徐々に無気力さと快楽至上主義が蔓延していった。
いつ終わるともしれぬ極限の恐怖は、正義と秩序を愛したXANADUの人々を変えていったのである。
 一月を待たずして、地上の楽園XANADUは、欲望と悪徳に満ちた世界となっていた。
他人の物を平気で盗む者、つまらないイザコザから人を殺す者、女と見れば暴力で犯す者、自分の娘や息子と相姦する者。正そうとする者の声は、ほとんどの者に届かなかった。
そうして人々は、長い年月をかけ築きあげた生活を、自らの手で破壊していったのだ。それが全て、死する者の世界より送られてきた "波動" によってなされたのだということに気づかぬまま・・。
 永遠とさえ思われていた、XANADUの恵まれたの日々は幕を閉じ、堕落と荒廃の日々がとって変わった。国土を覆ったこの悲劇は、しかしほんの前触れにすぎなかったのだ。

Xa
 ・・・それは唐突に来た。
 空に突如暗雲がたちこめ、天地を揺るがす雷鳴が轟いた。天を仰ぎ見た人々が見たのは、この世のものとも思えぬ光景だった。分厚い雲の合間から、幾千ともしれぬ異形のものどもが現れたのだ。
人々がおびえ逃げまどう中、それらじゃジュリデン王の住まう王城上空へと集まっていった。
 王城は騒然となった。衛士や重臣たちは、恐怖におののく自らの心を押さえつけ、王を守り固めた。やがて、頭上を飛び交うそれらの中から、大音声が響きわたった。
「我らは魔王ガルシス様の忠実なる下僕。XANADUの王ジュリデンよ、これからおこることを、しかと見届けよ」
 臣下たちの間に戦慄が走った。魔王ガルシス・・キングドラゴンの名でも知られるガルシスは、絶大な力を持つ、虚無の世界に君臨する王だったのだ。
 魔物たちは王城に舞い降りることなく、散開した。一瞬やわらいだ緊張は、だがすぐにかき消された。王城から離れた魔物たちは城下に襲いかかったのである。
 あるものは炎を吹き、またあるものは鋭い爪を光らせた。優雅に統一された街並みは、無残に引き裂かれた。それはまさに地獄絵図だった。
魔物たちは嬉々として殺戮を繰り返し、所有物を奪い去った。人々はただ逃げまどうばかりで、立ち向かうことはできなかった。それまでの退廃的な生活が、抵抗力を奪ってしまったのだ。
"負" の波動を送りつづけたガルシスの思惑通りであった。
 僅かばかりの間に、城下は焦土と化した。いままで「桃源郷」の名で呼ばれていた事をあざ笑うかのような、徹底した破壊と殺戮だった。魔物たちは再び空に舞い上がり、王城の上を飛び回った。
 やがて王城に、ガルシスの使者を名乗る男が現れた。尖った耳と血の気のない顔は、見る者の心を凍らせるものだった。
「XANADUの統治者ジュリデン王。これよりガルシス様よりのお言葉を告げる。一語一句聞き漏らすでないぞ」
「無礼な! ゆるさんぞ!」
 衛兵の一人が剣に手をかけた。
「待て。良いのだ、言わせておけ」
 王はなだめ、使者に顔を向けた。
「さあ、聞こうではないか。何が望みなのだ」
 使者は、油断なく目をあたりに這わせながら、声高らかに書状を読みあげた。
「一つ、XANADU地下にある "聖なる洞窟" を要塞化した上で我らに明け渡すこと」
「二つ、栄華の象徴であり、XANADUの統治者たる証し、そして持つ者を守る "レビック" "クォージィ" "タイタン" "サグリュイレス"の四つの王冠をよこすこと」
「三つ、XANADUで穫れる各生産物の六割を我らに収めること」
 王をとりまく重臣たちの顔が、見る間に蒼ざめていった。
「以上三カ条である。これを厳守するならば、我らは直ちにここから立ち去るであろう。本日、夕闇が覆う時までに城の塔に黒き布をかかげよ・・」
 玉座の間を沈黙が包んだ。しばらくして、王が苦々しく言った。
「ガルシスの要求はわかった。下がるがよい」
 使者は、声を出さずに口元で笑うと、きびすを返して大股に城を出て行った。
「このような要求、断じて呑めませぬ!」
「生きて恥辱にまみれるならば、死して名誉を守りましょうぞ!」
 重臣たちが口々に叫んだ。だが、王は静かに首を横に振った。
「名誉ある死はもとより本望。されど、民はどうなろうか」
 王の言葉の持つ意味に、側近の一人が気付き、弾かれたように飛び退いた。
「ではあの無体な要求を呑まれると仰せなのですか?・・」
 王の表情は苦渋に満ちていた。だが、一片の迷いも、そこにはなかった。
「予の心はすでに決しておる。先祖より受け継いだ王家の誇りは確かに重い。一命を賭してでも守らねばならぬ。されど、幾万もの民の命ほど重いものではない」
 ガルシスに屈する・・王の真意に気づいた臣下たちは、がっくりと膝をついた。すすり泣く者もあった。
「今は屈辱に耐えねばならん。そして、いつの日にか我らの子たちが、XANADUを魔王ガルシスの手より奪い返すことを信ずる他ないのだ・・」
「陛下・・」
「王家の威信や屈辱など、XANADUが元に戻ればそれですむこと、今は魔王ガルシスの言いなりになるほかあるまい。さあ、黒い布を塔にかかげよ」
「はっ!」
 この日から、本当の意味で悪夢の日々が始まったのだ。

Xa
 王室は、それ以後数十年にわたり屈辱の歳月を過ごしていた。魔王ガルシスへの朝貢は、重い負担としてのしかかっていた。
豊かだった大地は、ガルシスの巣くう洞窟から押し寄せる負の波動のため、もう以前のような実りはもたらされはしなかったのである。
 この歳月を、王家はただ忍従だけで過ごしたのではなかった。全ての元凶たる魔王ガルシスを倒す試みを繰り返してもいたのだ。そして今、同じ目的のために、王は主だった臣下を集めていた。
 これまでの全ての試みは徒労に終わっていた。腕に覚えのある兵士や若者が、特命を帯びて何人も地下要塞へ降りて行った。だが、再び陽を仰ぎ見ることのできた者はほとんどいなかった。
奇跡的に生還した者も、すでに廃人と化していた。目はうつろで、時折恐ろしい叫び声をあげて暴れまわった。
「堕落と退廃こそが、神が我らに課した真意なのだ。破壊だ! みな堕ちよ! それこそが、神の望まれていることだ!」
「屍の山だ・・。みんな死んでしまった。・・俺は死にたくない! 助けてくれ! 助けてくれー! 殺しても殺しても・・やめてくれ、殺さないでくれ!」
 彼らの狂気の叫びに耳を塞ぐことは、誰にもできなかった。魔物たちとの戦いの凄まじさは、聞く者の胸をも凍りつかせた。人々は臆した。血の絶えるその瞬間まで苦しめられるに違いないのだと・・。
「ガルシスを倒すことのできる者は、もうこの世界にはおらんのか・・」
 王は弱々しく言った。
「おそれながら・・」
 進み出たのは、側近のサミュエルだった。王は顔を上げた。
「サミュエルか。なにか妙案でもあるのか・・?」
「実は数日前、先代の王がガルシスの来る以前に投獄した、あの予言者たちの牢に行ったのですが、ある壁にこの事態を打開する手がかりとなるような詩が刻まれていたのです」
「まことか!」
 王はわれ知らず、大声を出していた。
「まずはお聞きください。これがその詩にございます」
 サミュエルは、静かだがよく通る声で読みはじめた。

Xa
  我らが安らぎの地に
  希望と幸運を注ぎし三つの光よ
  絶望の時来たりて
  天空を覆い尽くす闇
  大地を舞い降りる闇
  されど・・シリューガの目は閉ざされん
  そして・・分かれたる三つの光が
  いつか・・一つところに集いし時
  シリューガの目に守られし者
  幾多の闇を切り裂き
  この地を照らす光のメシアとならん

 サミュエルが読み終わった時、玉座の間は水を打ったように静まりかえっていた。事の重大さに、居合わせた誰もが身動き一つできなかった。
「私はこの詩を見つけた時、我々が何十年もの長きにわたって耐えてきた屈辱と恐怖の日々に、終止符を打つことのできる大きな手がかりが隠されていると思ったのです。」
「サミュエル、汝はその詩が、再びあの頃の平和な日々を取りもどすための予言になるというのだな?」
 王は身を乗り出した。
「御意にございます。思い出してくださいませ。 "シリューガの三つの目" とは、まさしくあの天空に輝く三つの星。・・ガルシスによってもたらされた暗雲でさえ、その光を遮ることができなかったあの三つの星のことです。
そして占星術師の言によれば、"一つのところに集いし時" とは、三百年に一度、三つの星が一点に集まる現象をさしており、しかも、今こそがその時とのことです。
もし、この詩の暗示するところに相違なければ、この時期を逃すようなことになりますと、あと三百年の永きにわたってガルシスの支配に甘んじることになりましょう」
 サミュエルの言葉が終わるか終わらないうちに、その場に居あわせた人々は口々に悲鳴のような歓声を挙げ、どよめきはとどまりそうになかった。
「みなの者、静まれ! 静まるのじゃ!」
 王は大声を出して制し、それからサミュエルに向かって言った。
「サミュエル、申し分あいわかった。もし、その時がいまならば、早急になすべき事があろう。申してみよ」
「七日の後に、国中にふれを出します。ちょうどその日から、三ヶ月間にわたって星は一つになります。その機会を失うわけには参りません」
「うむ。しかし、そのふれがガルシスの耳には入ったら、何とする?」
「ご心配にはおよびません。魔術師の血引きし者に命じ、夢による啓示をおこないます。選ばれた者のみに啓示がとどくようにいたします」
 サミュエルは、自身ありげにそう言った。

Xa
 七日の後、王城の広間には、若者たちが集まっていた。啓示に導かれた選ばれた者たちだった。王は立ち上がり大声を出して話し始めた。
「皆の者、よくぞ集まってくれた。我らの平和な生活を奪った魔王ガルシスを倒す時は来た! 皆の中から必ず英雄が生まれることになろう。いや、これから旅立つ者はすべて英雄と言えよう。
全力を尽くしてガルシスを倒してもらいたい。我らの平和のために、そして我らの子孫らのために」
 若者たちは、皆戦意に高揚していた。いますぐ地下要塞に赴きたいという者も数多くいたが、ガルシスの "負" の波動に負けないように鍛え直さねばならなかった。
サミュエルは王の命により、それぞれを七つの道場で学ばせることにした。過酷な訓練にもかかわらず、これらの若者たちは一人の脱落者もなく、次々とガルシスの地下要塞へと降りて行くのであった。
 この中で幾人が帰ってくるのだろうか?
 そしてザナドゥと魔王の運命はいかに?

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